Survive Said The Prophet インタビュー
取材・文 / 伊藤 大輔
写真 / Hiroya Brian Nakano
東京を拠点とする5人組ロックバンド、Survive Said The Prophet。2011年結成の彼らは、フロントマンのYoshによる感情的なヴォーカルと、プレイアビリティに溢れた4人のタイトなアンサンブルが生み出す、直情的でアグレッシブなサウンドが評価され、国内はもちろんのこと、海外のロック・バンドのサポート・アクトに加えて台湾やシンガポールのフェスに出演するなど、インターナショナルな活動を展開している。
現在、彼らはSHUREの楽器用ワイヤレスのGLXD16に加えて、イヤモニシステムのPSM300とSE215をイヤホンとして使用する。激しいライブ・パフォーマンスが持ち味でもある彼らは、活動初期から楽器用ワイアレスを使用していたが、ライブ・ステージの規模が大きくなるにつれて、先述したSHUREのワイヤレスシステムを導入するようになった。まず、彼らがPSM300を導入したきっかけだが、Show(ds)がクリックを鳴らすためにイヤモニを使いはじめたのがきっかけだったという。
イヤモニを全員が着けることによって、プロに切り替わった
「それまで僕以外は、転がしのモニターで聞いていたんです。でも、全員がイヤモニを使うようになって、みんな同じタイム感で全体の音を聴けるようになって、明らかにドラムも叩きやすくなりました。そういうところはドラマーの側から見て、イヤモニを使うことでもっとも変わった印象でした。それと耳に優しい部分でも良い環境だと思います。ドラムは生音も大きいし、転がしで鳴らしていた頃は音量の大きさもあって、ライブが終わると三半規管がおかしくなっちゃって、立ち上がった時によろけるようなこともあって。もちろん音楽鑑賞のときよりも音量は大きいけど、イヤモニにすることで許容範囲内に抑えられるし、耳への負担を考えても良い選択だと思います」(Show)
「僕らは5人編成ですけど、だいたいライブハウスってモニターが4発しかないところもあって、そもそも、ずっとモニターが足りないような状態で演奏したんです。だから、自分のプレイでどういう感じで音が出ているのかあまり分かっていなかった。でも、イヤモニしてからは自分のプレイがはっきり聴こえるようになって、プレイがより丁寧になった感じはありますね」(Ivan)
もともとShowが使いはじめたイヤモニだが、「どこに行っても同じ環境で演奏できるのがありがたくて、すぐに重宝するようになった」とTatsuyaが語るように、他の楽器陣はイヤモニの環境に早く慣れることができたが、Yoshはもともとイヤモニに抵抗を持っていた。「これまでバラード曲ってその日のテンションで歌っていた部分もあったんですが、イヤモニを使ってみたら“もうこれしかない”って分かって、そこからは何とか慣れていきました」と言う。全員がイヤモニを使うようになってからのライブの環境について「スタジオに入っている感覚に近い」と、Yoshは説明する。
「僕たちはメンバーひとりひとりの我が強く、ステージで出したいものがあるから、自分の音が聞こえなければ意味がないっていうメンタリティでした。だから、小さいライブハウスでやっていたときは必要のないケンカも多かったと思います。イヤモニを使うようになってからは、落ち着いて自分が今何を聴きたいんだろうっていうのをハコの環境に関係なく調整できるようになりました。そういう意味ではスタジオに入っている感覚に近いですね。これをメンバー全員が耳に着けることによって、プロに切り替わったというか。波形の聞き方だったり、リズムの取り方だったり、みんなのグルーブの合わせ方、外し方……その全部の感覚がコントロールできる。例えば、今日はこの人の音が聴いてみたいっていうことができるし、イヤモニを付けることで得られた感覚の広がり方が、僕らにとって一番大切だったんじゃないかなって思います」(Yosh)
モニタリング用に開発されたイヤホンだからこそ
モニター用のイヤフォンは全員SE215を愛用する。その音質についてShowは「ライブ向きだと思う」と評価するが、同じくギタリストのIvanも同じように語るが、TatsuyaとYoshはまた異なる意見を持っていた。
「SE215はフラットな感じがありますね。普通に音楽を聴く用のイヤホンとは違って、ライブではフラットさが大事で、そういう特性のイヤフォンで聴くことで、自分の音だけでなくてアンサンブルの音がどう鳴っているのか、認識しやすいです。その点でも頼りにはなっています」(Ivan)
「SE215はケーブルの取り外しができるのが良いですね。一体型のイヤホンだとケーブルが断線したら修理しないといけないけど、SE215ならケーブルを外して新しいのに変えられば解決できる。そこが一番のメリットだと思いますね。今のところ何かトラブルがあっても、ケーブルをハズして掃除すればだいたい大丈夫です」(Tatsuya)
「僕は自分が慣れているヘッドホンがあるので、みんなの言うフラットとはちょっと違っていて。僕にとってSE215は、200Hzから500Hzらへんのもっこりしてる感覚があって、音量を上げると気持ち良いんです。自分の声質的にも、バラードとかで低めの音域を歌う時なんかに、あえてちょっと音量を上げることが多いですね。」(Yosh)
シールドよりもスピーディに楽器を替えられる
PSM300を導入した頃に楽器用ワイアレスもGLXD16へとチェンジ。先述したように、彼らはバンドの結成時からワイヤレスを使用していた。「ステージを走り回りたいから、ライブはワイヤレスが基本でした」と語るTatsuyaはもちろん、GLXD16については操作性、耐久性、音質についてメンバー全員が高く評価する。
「ずっといろんなメーカーのワイヤレスを試してきましたが、やっぱりシールドで楽器とアンプを結線したときの方が良いなって感覚があって。でも、GLXD16を使うようになって、それをほとんど感じなくなって。低域の再現力がすごくしっかりしてる印象がありますね。それに一回設定したらあとは自動でリンクしてくれるし、何台でもつなげられるっていう点でも、SHUREのワイヤレスは一番安定してました」(Tatsuya)
「僕らはラウドなロックもやるし、アコースティックだったり、バラードもあって、チューニングの異なるギターも用意していたりして。GLXD16はワンアクションの動作でいけるから、シールドよりもスピーディに楽器を替えられる。それもあって、ライブ中に使う楽器の本数も増えました」(Ivan)
「僕らは渋谷でライブをやることが多いんですが、渋谷はホントに無線が死ぬほど飛びかっていて、混線がネックだったんです。でも、GLXD16にしてからはほぼ無いですね。それと僕のなかにはワイヤレスを選ぶ基準に送信機がプラスチックじゃないってのが絶対条件としてあって。というのも以前に、プラスチック製の送信機を演奏中に背中で割ってしまったことがあって、もうプラスチックはこりごりだと思ってたときにGLXD16に出会ったので、耐久性にも魅力を感じています。あとは電池が長持ちすることと、電池の残量をちゃんと視認できるところにも、プレイヤー目線で作られた製品だと感じるし、ゲイン調整が細かくできるのもいいですね」(Yudai)
「僕らみたいなロックバンドはワイヤレスがいつ壊れてもおかしく無いようなパフォーマンスをしている。でも、例え自分たちがそれをラフに扱っていても、愛着のある道具であることに違いはなくて。でも、その道具が壊れた時って、どうしても予算とクオリティにどこで落としどころをつけるか考えると思うんです。そういう意味でもGLXD16コストとクオリティのバランスがすごいと思います」(Yosh)
そもそもSHUREのマイクが使えないとダメでしょって感覚がある
ヴォーカルのYoshはBETA57A、メイン・コーラスを担当するYudaiのヴォーカル・マイクはBETA58Aを使用している。ふたりともにこれまでにさまざまなマイクをテストしてきたが、結局のところSHUREのスタンダード・モデルに落ち着いていたと言う。その理由をこう語った。
「いろんなマイクを試して、それが自分の声に合わないって言うのは、自分の理解力の無さであるんだなと思う経験をしたことがあって。だから今の僕にとっては、ボーカリストからしたら、そもそもSHUREのマイクが使えないとダメでしょって感覚なんですよね。世界のNo. 1のダイナミック・マイクを使って、言い訳するぐらいだったら、自分を見直したほうがいいんじゃないかなって。ワールドクラスのスタンダードなマイクを理解するという意味でも、BETA57Aを使いこなさないといけないと思っています」(Yosh)
「僕にとってSHUREのマイクは1番レスポンスが早いと思っています。自分にとっては声がフラットに返ってくるから、安定感もありますね。他のマイクだと変なところにクセがあったりすることもあって、それが気に入らないとどうにもならないことが多かったりもしましたが、SHUREの場合、何かあったときでもイジればどうにでもなるという懐の深さも魅力です。」(Yudai)
SHUREを使うことで、自分たちのサウンドを苦も無く持っていくことができる
そんな彼らの最新アルバムのタイトルは『space[s]』。Yosh曰く「“空間”や“距離感”を音楽で表現したかった」という作品で、彼らにとっては3回目の海外レコーディング作品でもあり、これまでの彼らにとって最もポップでありながらもダイナミズムに富んだサウンドに仕上がった。「バンドとしてのギヴ&テイクができるようになった」とYoshも語る作品について、メンバーはこう説明する。
「『space[s]』って言うくらいだから“間”を意識しました。リズムはいくらでも詰められるから、いかにどこでカッコ良く抜くかを意識しました」(Show)
「ギターに関しては全部アナログ機材を使っています。モダンサウンドでも温かみがあるサウンドになったんじゃないかなって思います。アンプのキャビネットも3つ並べてマイキングして、全部録って。そこからミックスして、どれが表、真ん中だったりとか、細かく色々選びました。そうすると音圧が全然変わってくるんですよね。モダンサウンドのなかにも、温かみがあるサウンドになったんじゃないかなって思います」(Ivan)
本作のツアーでは引き続きイヤモニのシステムはPSM300、楽器ワイヤレスはGLXD16を使用する予定だ。海外公演でも使用するGLXD16について「2.4GHzのメリットは海外でも使えること」と言うTatsuyaに続き、Yoshはこう締めくくった。
「僕らは海外に行くっていうスタンスを昔から意識していたから、自分たちが日本でやっていることをどれくらい海外に持っていけるかって常に考えていて。そういう意味でも世界標準のSHUREを使うことで、自分たちのサウンドを何の苦も無く持っているっていう感覚はすごく気持ちいいし、力強い存在だと思っています」