ステレオマイキングの一般的なテクニック

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このトピックでは、ステレオマイキングの一般的なテクニックについてご紹介します。マイク間隔を空けて設置する方法、X-Y方式、ミッドサイド方式について、オーディオサンプルと設置図を使って説明します。

ポッドキャストの概要
 

ステレオマイキングがなぜ必要なのでしょうか。すぐに思い浮かぶ理由に、ポジショニングとアンビエンスの2つがあります。

ステレオ音響サウンドは空間における位置情報が追加されるため、私達が2つの耳で聞く音に非常によく似たサウンドになります。モノラルマイク1本の場合とは異なり、ステレオマイキングでは、リスナーにレコーディング時の楽器配置に対応したサウンドイメージを与えることができます。ステージ左手からのサウンドは、主に左側のスピーカーから聞こえます。ステージ右手からのサウンドは、主に右側のスピーカーから聞こえます。

また、ステレオレコーディングでは、レコーディングされた環境に起因するかすかな音響を、モノラルマイキングよりも詳細にとらえることができます。どんなに狭い空間でも、音波は壁、天井、床、その他の表面に反射します。こうした反射によって、自分がいる場所を音で認識できるのです。この原理から、ロッカールームでレコーディングしたサウンドと、オフィスでレコーディングしたサウンドは異なって聴こえるのです。

 

ステレオマイキングの歴史
 

ステレオマイキングのテクニックが考案されたのは、1930年代と比較的最近ですが、この時、米国のBell Laboratoriesと英国のEMIが、リスナーにリアルな感覚を与えるために必要なことは何かを知るために、たくさんのレコーディング用マイクロフォンと再生用ラウドスピーカーを調査しました。

2本のマイクを前方両端に配置し、2台のラウドスピーカーを後方両端に配置するのが最低限必要な配置方法であることだけでなく、マイクの位置を変えると、また違った結果が得られることも分かりました。ここでは、最も一般的な配置テクニックを4つ、ご紹介します。

 

4つのステレオマイキングテクニック
 
マイク間隔を空けて設置する方法

最も基本的なテクニックが、2本のマイクの間隔を空けて設置する方法です。このテクニックでは同じマイクを2本使用し、通常1~3メートル離れた位置に配置します。この間隔は、レコーディングを行う音楽グループの規模によって変えます。

間隔を空けて設置した2本のマイクにより、非常に開けた、広々としたサウンドが得られます。これは、プレイヤーの左手から発するサウンドが、ごくわずかですが右側のマイクよりも左側のマイクに先に達するためです。この時間の遅れにより、多くの人が好む、非常に広大な空間が生み出されます。

ただし、2本のマイクで同時に音を拾うため、またマイクが中央の演奏者の音を直接拾わないため、ステージ中央の演奏者のサウンドが、適切に再現されないことがあるという欠点があります。これにより、一部の音色が変化し、サウンドが聞こえる方向を正確に伝えることがやや難しくなるため、正確にそのままのサウンドにはなりません。

 

X-Yペア:同一の場所にマイクのペアを設置する方法

X-Y方式では、2本の同じマイクを、同じ場所に上下に重ねて設置します。この場合重要なのは、マイクヘッドの位置と、マイク間の角度の2つです。X-Y方式には何種類かありますが、まず同じ場所に設置する場合を説明します。

この配置では、マイクを水平方向にV字になるように設置します。Vの下側がステージの方を向くようにします。マイクの頭はVの下側になるようにします。2本のマイクは、水平方向に関してできる限り近づけて、縦に並べます。そうすると、サウンドが2本のマイクに同時に届きます。

同じ場所に2本のマイクを設置することで、位置的な正確さが非常に高まります。両側からのサウンドが同時に届くため、ステージ上で演奏者がどの位置にいるかが分かりやすくなります。欠点は、広大な空間性を得られないことです。そのため、レコーディングされるサウンドは、部屋の音響特性によりドライになったり、味気ないサウンドになることがあります。

 

X-Y方式:近い場所にマイクのペアを設置する方法

2本のマイクを近い場所に設置するだけで、空間の広がりが付加されます。このテクニックは、2本の同じマイクを水平方向にXの形に設置します。

マイクの角度と距離にはいくつかの基準がありますが、最も一般的なのがフランス公共放送が用いているORTF方式です。マイク間の角度を110度にし、マイクの頭を15cm離して設置します。マイクの頭をわずかに離すことで、人間の左右の耳の間隔を再現し、非常に正確な位置感覚と空間性を得られます。

 

ミッドサイド(MS)方式

最も興味深い配置が、ミッドサイド方式またはMS方式と呼ばれるステレオマイキングテクニックです。このテクニックでは、ミッドと呼ばれるカーディオイド(単一指向性)のマイクを中央に置き、ステージ方向に向けます。このマイクは、他のマイクと同様モノラルでサウンドを拾います。この他に、双指向性のマイクをサイドマイクとして使用します。ミッドマイクの下に、左右を向けて設置します。サイドマイクは周囲環境と位置的な情報を取得するためのマイクです。

ミッドマイクとサイドマイクからの信号は、これらの信号を演算結合する小さなマトリクス回路を通り、左チャネルの出力と右チャネルの出力が生成されます。

ミッドサイドのレコーディングは、2種類のマイク(カーディオイドマイクと双指向性マイク)または、この2つの要素と処理回路を備えた1本の専用カーディオイドステレオマイクを使用して行えます。

2本のマイクが空間の同じ点にあるため、ミッドサイド方式のレコーディングでは位置の正確性が高く、演奏者がステージのどこにいるかをリスナーが簡単に思い浮かべることができます。サイドマイクのレベルを変えることで、ステレオイメージをコントロールできます。つまり、空間の広さを後処理で変更することができます。また、1本のマイクをスタンドに取り付ければ良いだけなので、設置が簡単でミュージシャンやオーディエンスの集中をとぎらせることが少なくなります。

 

マイクの取り付け方のヒント
 

マイクスタンドは、異なるものを2本使用してもかまいませんが、Shureでは設置が簡単な高性能のアダプター(A27M)をご用意しています。このアダプターは、1本のマイクスタンドに2本のマイクを取り付けられます。また、2本のマイク間の角度と、マイクの頭の相対的な位置を変更することができます。

 

最適なステレオマイキングテクニックの選択
 

自分のレコーディングにはどの方法が適しているでしょうか。それは、個人的な好みや、レコーディング対象によって決まります。小型のオーケストラのマイキングをする場合で、広大なサウンドを求めている場合は、マイク間隔を空けて設置する方法を試してみましょう。小さなグループのチェロのみをマイキングする場合は、近い場所にマイクのペアを設置する方法を試してください。会場内でマイクスタンドを設置できる場所に限りがある場合や、ステレオイメージを後でリミックスできるようにする場合は、ミッドサイドマイクか、いくつかを組み合わせる方法を試してください。

 

詳細またはアイデア集については、「Microphone Techniques for Recording(英語)」ブックレットの40ページをご覧ください。

編集者注:この記事の元記事は、2007年10月12日に公開されたものです。2017年3月23日に更新されました。