オーディオのうわさ うそ?ほんと?Part 1
都市伝説と同じように、マイクについてもさまざまなうわさが語られてきました。その歴史の古さは、ビッグフットやネッシー、さらには1947年におきたロズウェル事件にも匹敵するほど長きにわたっています。そんなマイクのうわさを今ここで、真実の光のもとに検証するときが来ました。この記事を読めば、次にマイクのうわさが話題に上ったときにはあなたはエキスパートとして迎えられることでしょう。
都市伝説と同じように、マイクについてもさまざまなうわさが語られてきました。その歴史の古さは、ビッグフットやネッシー、さらには1947年におきたロズウェル事件にも匹敵するほど長きにわたっています。そんなマイクのうわさを今ここで、真実の光のもとに検証するときが来ました。この記事を読めば、次にマイクのうわさが話題に上ったときにはあなたはエキスパートとして迎えられることでしょう。
まったく干渉されることのないワイヤレスマイクロホンの周波数帯域が存在する
間違いです。 これはプロのオーディオメーカーによる作り話。ワイヤレスマイクだけのために確保された周波数帯はありません。つまり、干渉されない周波数帯などというものは存在しません。たとえあったところで、その周波数帯域を使用している他のワイヤレスマイクロホンからの干渉を受けるのは避けられません。
ですから「安全な周波数帯域」といったものは存在しないのです。すべての無線スペクトラムは異なるタイプの機器によるさまざまな使用に割り当てられています。すべてのワイヤレスマイクロホンもやはり、他の多種のデバイスと同じ周波数レンジで操作されます。
アドバイス:チューニングの幅ができるだけ広いワイヤレス機器をご使用ください。
コンデンサーマイクはダイナミックマイクほど堅牢ではない
間違いです。 このうわさが生まれたころ、コンデンサーマイクロホンは非常に高価で、スタジオグレードのモデルのみ発売されていました。当時これらのマイクロホンが、おそらくSM58のようなダイナミックマイクと比較されたのでしょう。きわめて高価格、およそ30年代のバキュームチューブマイクロホンがビールに浸されたりステージ上で何回も落とされたりすれば、もちろん故障することは明らかです。SM58がこれに耐えている間に、影も形もなくなってしまうことでしょう。
しかし現在、当社のコンデンサーマイクロホン4種はすべてSM58と同じ耐久性を備えています。通過する環境テストも同じなら、落下テスト、温度テスト、湿度テスト、塩水スプレーテスト、振動テスト、電磁テスト、その他諸々の厳格なテストを同じように通過し、同じように合格した製品です。
1978年ごろにはスタジオコンデンサーマイクロホンとしてSM81が誕生しました。加工スティールハンドルで作成され、他のマイクロホンと同等の軍用ともいえるような環境的耐久性を備えていたことから、このマイクは瞬く間にツアー音楽業界の人気製品となりました。今日でも、15年または20年近くツアーで使用され続けているものがあるほどです。トラックで轢いても、床に落としても、ドラムスティックで叩いても壊れない。当社のコンデンサーマイクはすべて堅牢につくられています。
つまり、現代においてShureのコンデンサーマイクロホンが壊れやすい、というのはただのうわさに過ぎないのです。
マイクは音量が大きいほど良い
間違いです。 一部のマイクは他のマイクよりも感度が良いということはありますが、マイクロホンの感度は直接音質につながるものではありません。音楽用途では、マイクが音源に非常に近いところにある場合、マイクの感度は重要ではありません。より低い感度のマイクからでさえ十分すぎるほどの信号がPAシステムに送られるからです。
もしマイクの感度が強すぎたとしたら、ミキサーチャンネルで音量を絞ってミキサーに過負荷をかけないようにする必要があるというだけ。スネアドラムでもう1本のマイクよりも10dB感度が高いマイクを使用するとすれば、より感度が高い方の音量を絞ってください。
感度の高さは音質には関係ありません。ネオジム磁石マイクロホンが発表されたころは、何本かのマイクを並べ、ミキサーに接続して各チャンネルレベルを同一に設定してデモンストレーションを行うことがよくありました。各マイクロホンをテストする中で、ネオジム磁石マイクロホンは明らかにアルニコ磁石タイプよりも音が大きくなりました。
リスナーは音響心理学的に音が大きいほど音質が良いと思ってしまいがちで、これはステレオスピーカーのセールステクニックにも良く使われています。ひとつのステレオのデモが他のステレオよりも大きく聞こえれば、顧客はそれが一番いい音がした、と信じ、つまり一番いいステレオだと思ってしまうのです。これはマイクロホンでも同じことで、音量の違いと、音質の違いを混同しないように気をつける必要があります。
USBマイクとアナログ(XLR)マイクでは、アナログのほうが音質がいい。
必ずしもそうとは限りません。 多くのUSBマイクにはスタジオレコーディングで使用されるXLRバージョンと同一のコンデンサーマイクエレメントが使用され、その場合USBモデルでも同じように高い品質のサウンドシグネチャーを提供することができます。2つの主な違いは、接続方式です。USBマイクに内蔵されるアナログ-ツー-デジタルコンバーターも、レコーディングの音質に影響を与えます。
USBマイクにはレコーディングの際、特にマルチトラックの場合にレイテンシー問題がある。
必ずしもそうとは限りません。Shure PG42-USBおよびPG27-USBなどのUSBマイクにはヘッドホンアンプが組み込まれ、アナログ-ツー-デジタル変換が起きる前の入力信号を直接モニタリングすることが可能です。これにより、マルチトラックの間の再生モニタリングにコンピューターのスピーカーを使用せずにすむことにもなります。
一部のマイクロホンは他のマイクロホンよりも収音距離が長い。
間違いです。 収音距離はマイクロホンの仕様にはありません。マイクのユーザーは収音距離(リーチ)というコンセプトを、マイクがより遠くの場所から周りの雑音にかかわらず望みの音だけ拾ってくれる能力、と捉えがちです。一部のマイクは他のマイクよりもさらに遠くから声を拾えるとまで思われています。
実際には、マイクの能力が遠距離まで到達して音を拾うということはありません。単純にダイアフラム上の圧力変動を計測しているだけです。マイクロホンは、周りでどの程度の距離で何が起きているかといったことを「理解」することはありません。マイクロホンの「収音距離」の特定は、周辺の音環境により完全に左右されます。
例を見てみましょう。マイクを持って7月の中旬、夜中の2時にスーパーボールの会場へ行ってみたとしましょう。誰もおらず、エアコンもオフ、そこはただの静かな巨大な箱です。ここでスタジアムの一方にマイクを設置して、スタジアムの反対側でコンクリートに釘を一本落としたとしましょう。この時マイクロホンは何百メートルも先で釘が一本落ちた音さえ拾うことができます。環境雑音がないからですね。それでは同じスーパーボール会場に、第4クォーターの中盤、敵方のクォーターバックがラインアップしてプレイをコールしようとしているところに行ってみたとしましょう。マイクロホンをスタジアムの一方に設置し、スタジアムの反対側の同じ場所で、同じ釘をコンクリートに落とします。その音はもちろん聞こえません。何が違うのでしょう?同じマイク、同じ釘、同じコンクリート、同じ建物。しかし環境雑音は今、100デシベル以上高い。これが違いです。
マイクロホンのいわゆる「収音距離」とは、その言葉自体正しくはありませんが、あえて言うならばこのような雑音の中にあってもサウンドを拾うことができる能力によります。つまり、環境雑音を考慮せずに定義されたマイクの「収音距離」といったものはありえません。
マイクロホンの仕様の中で、唯一いくらか「収音距離」というコンセプトに近いのは、指向性あるいはマイクロホンの極性パターンでしょう。それでもマイクロホンの指向特性は、マイクが周辺音声からどの程度音を拾い上げるかを定義するもので、どのぐらい遠くから拾えるかを示すものではありません。
数値が示されていても、その値は大きくありません。無指向性マイクとハイパーカーディオイドマイクが拾い上げる環境雑音の差は、たったの6dBです(ハイパーカーディオイドマイクが拾う環境雑音は無指向性マイクが拾う環境雑音よりも6dB低くなります)。音の逆2乗の法則により、音源とマイクロホンの距離が倍化されると、音源レベルはこれに伴って6dB低下します。環境雑音にもこれが当てはまります。
音源から約30cmの軸上の音に対して一定率の環境雑音を無指向性マイクロホンが拾うとすると、ハイパーカーディオイドマイクロホンなら音源から2フィート約61cm離れた場所で同率の環境雑音を拾います。これはハイパーカーディオイドが軸上の音に対してより感度がいいということではなく、環境雑音に対しての感度が6dB低いということなのです。
この意味では、ハイパーカーディオイドは「収音距離が長い」と言えるかもしれません。ただし、どちらのマイクでも背景雑音が高ければ離れた場所の音を拾うということは不可能です。マイクは、ダイアフラムまで到達した音を計っているのみなのです。
ファンタム電源とバイアス電圧は同じである。
間違いです。 プロフェッショナルオーディオ機器のユーザーの多くがファンタム電源とバイアス電圧は同じだと信じていますが、これは間違いです!ファンタムとバイアスは同じではありません。
ファンタム電源とは、コンデンサーマイクロホンのプリアンプに電力を提供するDC電圧(11~48V)のことです。ファンタム電源はマイクロホンミキサーによって提供されるのが普通ですが、独立したファンタム電源を使用することもあります。ファンタムはXLRピン2と3が1ピンに対して同一のDC電圧を通している平衡回路を必要とします。ミキサーがファンタム48Vを提供する場合、マイクロホンケーブルのXLRピン2と3は1ピンに対してそれぞれ48V DCを通しているということです。もちろん、マイクケーブルはファンタム電圧と同じくオーディオ信号も通しています。
ファンタム電力を供給するミキサーには、コントロール弁として動作する限流抵抗器が備わっています。マイクロホンまたはケーブルの配線に誤りがある場合、これらの抵抗器がマイクロホンへの電流を制限してファンタム電源回路の破損を防ぎます。平衡出力のダイナミックマイクロホンはファンタム電源には影響されません。ただし、不平衡出力のダイナミックマイクロホンには影響があります。マイクロホンの破損はありませんが、正しく動作しなくなる恐れがあります。
ファンタム電源とは異なり、バイアスは平衡回路を必要としません。バイアスはエレクトレットコンデンサーマイクエレメントの出力に接続されたJFET(接合型電界効果トランジスタ)に電源を供給します。JFETは、コンデンサーエレメントを使用するすべてのマイクロホンデザインに必要なインピーダンス変換機として機能します。コンデンサーエレメントの出力インピーダンスは大きく(100万Ω以上)、JFETはより高いインピーダンス(1000万Ω以上)を持つコンデンサーエレメントの出力を負荷として入力し、信号レベルの損失を最小化します。また、JFETの出力は低いソースインピーダンス(1000Ω)をマイクロホンプリアンプに提供します。
一部のコンデンサーマイクロホンでは、バイアス電圧はオーディオと同一のコンダクタから提供される必要があります。JFETを内蔵したコンデンサーエレメントはこの構成を使用してシングルコンダクタ、シールドケーブルを用います。その他のコンデンサーマイクロホンでは、バイアス用とオーディオ用で異なるコンダクタを使用します。メーカーのデータシートを参照して正しい配線構成に従うようにしてください。
ダイナミックマイクロホンは、オーディオとバイアス電圧が同一のコンダクタを通過しないよう、バイアス電圧を提供する入力(ワイヤレス送信機など)に接続しないようにしてください。このように接続してしまうと、マイクロホンの周波数応答が変化したりオーディオ信号に異常が生じる場合があります。ダイナミックマイクロホンをバイアス電圧の入力に接続しなくてはならない場合は、必ず遮断コンデンサを使用してください。
典型的なエレクトレットコンデンサーマイクロホンでは、不平衡なバイアスが必要なのはJFETで、プリアンプには平衡のファンタム電源が必要となります。つまり、ファンタム電源を必要とするコンデンサーマイクロホンはワイヤレス送信機のようなバイアスのみを提供する入力では動作しないということです。
ファンタム電源とバイアス電圧は同じではないのです!
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