【大学】 名古屋大学|大講義室やホールなどの大空間でハイフレックス型授業を実現する新たな収音手法を採用。イベントでの活用も|MXA910、P300
天井に収音マイクを設置したことでマイクランナーの出番がなくなります。授業運営が効率的になるだけでなく、学生の発言機会も増えたそうです。
電子システム株式会社 東海支社 営業部 営業2グループ マネージャー 馬場 勇太 氏
お客様プロフィール
◎ 導入事業者
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学
業種:教育機関
https://www.nagoya-u.ac.jp/
◎ 納入事業者:電子システム株式会社
https://densys.jp/
◎ 導入場所
導入場所:東山キャンパス内 計5箇所
竣工月:2022年3月
課題
名古屋大学では、新型コロナウイルスの感染拡大による学生の入構制限を行う中、「ハイフレックス型授業設備の整備」に着手されました。しかし、大講義室などの広い室内で講義を行う際には出席学生の発言の音声を遠隔で聴講する学生にも届けなければならず、マイクランナー(質疑応答の際に聴講席の質問者にハンドマイクを受け渡す係員)の確保と業務負担が課題でした。また、マイクの受け渡しの度にタイムラグが発生してしまうほか、マイクの到着を待たずに発言してしまうと聴講生が聞き取れないという問題もありました。そのためマイクランナーが必要とされるワイヤレスマイクに代わる新たな収音手法を採用する必要がありました。
ソリューション
そこで同大学では、大講義室やホールなど広い室内においても出席する学生の声を隅々までカバーできる天井設置型のシーリングアレイマイクロホンに注目。一般的には天井が高く広い空間では収音が難しいとされる天井設置型アレイマイクですが、その常識を上回る性能を持つShureの「MXA910」を採用。その性能を十分に発揮させるため、導入予定の全教室を対象に取付位置の事前シミュレーションを行いました音声品質に大きく影響を及ぼす反響やノイズ、エコーバックを効果的に除去するオーディオプロセッサーの「IntelliMix P300」も併用することとしました。この組み合わせは、高い技能を持つシュアスタッフによる音響調整が可能でした。また設備音響の主流であるデジタルオーディオネットワーク(Dante)を採用しているため、STP型LANケーブルを接続するだけで信号伝送・制御・給電が可能になり作業効率性が高い点も採用の決め手となりました。
効果
2022年4月から本格運用が開始された本システムついて、電子システム株式会社 東海支社 営業部 営業2グループ マネージャー 馬場 勇太氏は、発言者が発言する度にマイクランナーがハンドマイクを受け渡す必要がなくなり、運用性と効率性が大きく改善されたと指摘します。
「最大の効果は、聴講エリアに出席する学生の発言全体を均一に収音できるようになり、スムーズな議論や質疑応答が実現したことです。それにより、聴講者同士が講義室/リモート間で発言を聞き漏らすことも大幅に削減され、明瞭なやりとりができるようになりました。学生側の発言機会が増加傾向になったことも大きな収穫です。また、ハイフレックス授業の度に発生していたマイクランナーの割り当てやハンドマイクの確保など、準備の手間が減ったことも多大なメリットと感じています」(馬場氏)
[スペシャルインタビュー]
国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学(以下、名古屋大学)は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う学生の入構制限が続く中、授業の継続を可能にするため、ハイブリッド授業のひとつであるハイフレックス型授業の導入に取り組まれました。そこで必要となったのが、ハンドマイクを介さないインタラクティブなコミュニケーション手段の導入でした。その経緯と導入効果について、システム・インテグレーターである電子システム株式会社(以下、電子システム)の東海支社 営業部 営業2グループ馬場 勇太氏、塩野谷 圭一氏、後藤 颯馬氏の3名にお話を伺いました。
ハイフレックス型授業を導入するも、ハンドマイクを使わない収音方法を模索していた
―― 電子システムの事業概要や業界での強みなどについてご紹介ください。
馬場氏:弊社は、1977年に名古屋市で設立し、当時のソニー株式会社 LLシステム部の特約店としてビジネスを開始しました。首都圏及び東海地区の私立大学・高等学校を中心に視聴覚設備やLL設備の導入を行うことから始まり、その後は一般企業のOA化への対応など、文教・企業・官公庁への映像音響システムの提供を通じて社会に貢献してまいりました。現在は「Densys」ブランドでIT教育システム、プレゼンテーションシステム、遠隔講義システム、CALL(Computer Assisted Language Learning;コンピュータを活用した外国語学習)システム、映像・音響システム、ビデオ会議システム、医療用電子システムなどの提案及び設計・施工・保守・サポートを行っています。
弊社の強みは、営業担当者自身がICT技術を駆使し、様々なメーカの製品を柔軟に組み合わせて、お客様のニーズに最大限応えられる設計・提案活動を可能にしていることです。それをコンセプトにした「ICT innovation by Densys」をスローガンに掲げ、お客様のベネフィットに貢献するプロ集団としてベストソリューションの提供に取り組んでいます。
―― ビジネスの独自性についてお聞かせください。
馬場氏:弊社は大きく2つの事業分野で独自のソリューションを提供しています。1つは学びの環境を創造する「教育ソリューション」です。教育機関ごとの多様な特色の発揮と質の高い学修の環境を創造するために、ICTのノウハウと知見を駆使し、最適なコストで魅力あるキャンパスづくりの支援をいたします。
もう1つは、官公庁や企業、団体などを対象とする「公共・法人ソリューション」です。BtoBやBtoS(社会・公共)の各領域でエンドユーザー様の真のベネフィットを実現するためにICTを駆使したシステムを提案いたします。
電子システム株式会社 馬場 勇太氏
―― このたびは、名古屋大学の東山キャンパス内施設にShure製品をご採用いただきましたが、導入提案された背景についてお聞かせください。
塩野谷氏:きっかけは、2020年始めに国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大したことでした。当時、同大学も学生の入構制限に踏み切らざるを得ず、授業の継続と事業経営の継続が大きなチャレンジとなっていました。暫定的にZoomなどのコラボレーションサービスを活用して授業を行う教員もいらっしゃいましたが、大講義室やホールなどの施設ではZoomに対応した設備が整っていなかったため、先生がマイクの音声をPCに取り込み、遠隔で聴講する学生に送信するなどの方法でなんとか授業を継続していました。
そこで名古屋大学では、「ハイフレックス型授業設備の整備」に本格的に着手されたのです。ハイフレックス型授業とは、対面にするかオンラインにするかを学生が選ぶことのできる授業スタイルです。教員はPCの画面を講義室のスクリーンへ投影しながら講義を行い、同時にビデオ会議システムやZoomなどのコラボレーションサービスを用いて遠隔にいる学生に同時配信するとともに、録画した映像は学習管理システムでオンデマンド配信するなどが一般的です。
しかし、大学の講義は一方的に聴講するだけではなく、質疑応答や議論などがインタラクティブに行われます。そのため、大講義室などではマイクランナーの方がマイクを持って受け渡しするという方法をとっていました。当時は都度マイクを消毒するなど、受け渡しに時間がかかってしまうほか、場合によっては議論が白熱し、マイクを待たずに肉声で発言してしまうことが問題となっていました。マイクを介さないと遠隔で聴講している学生には音声が届かなくなるという問題が生じるからです。名古屋大学ではこれをなんとかしたいと考えておられました。
電子システム株式会社 塩野谷 圭一氏
MXA910なら天井が高く広い空間でも明瞭な収音が実現できる
―― そうした課題の改善に向けて、1)「Microflex® Advance™ MXA910 シーリング・アレイ・マイクロホン」(以下、MXA910)と、2)「IntelliMix® P300オーディオプロセッサー」(以下、IntelliMix P300)をご選定いただきましたが、それらをご提案された理由や、選定の決め手についてお聞かせください。
天井高く設置されたMXA910が、発言を余すことなく収音(推奨設置高:約4m)
馬場氏:名古屋大学からハイフレックス型授業実現のご依頼をいただき、課題を把握した段階で、真っ先に思い浮かんだのが、天井設置型マイクロホンの活用でした。ShureにMXA910があることは知っていました。当時は競合他社の製品よりも格段に高性能だったため、それを導入すれば大講義室のような天井が高く広い空間でも天井から収音を実現できると直感したのです。
後藤氏:大講義室やホールに天井設置型マイクロホンを取り付ける際は、机上の設計も大事ですが同時に現場環境に合わせて聞きやすい音質に整えるための信号処理が重要です。そのため、MXA910に最適なオーディオプロセッサーとしてIntelliMix P300を併用しようと考えました。
―― 導入から稼働開始までの経緯をお聞かせください。
塩野谷氏:検討の結果、MXA910とIntelliMix P300を導入する施設を、300名収容の大講義室や、180名収容のホール、約100名収容の会議室など5箇所とし、2022年3月までに導入を完了して、2022年4月から本格稼働を開始しました。
教卓の中に設置されたIntelliMix P300オーディオプロセッサー
特にMXA910は大講義室に6台、ホールに4台と複数台を設置するので、IntelliMix P300で整音しています。これらの大きな施設では、シュアからシミュレーションに基づいた配置図が提供され、必要な収音エリアに応じた最適な機器構成の目安が得られたことで、名古屋大学にも裏付けのある提案ができました。
後藤氏:設置作業は大学の春休みを利用した短期間で実施しました。MXA910は電源ケーブルも音声ケーブルも不要で、PoE(給電)対応STP型LANケーブルを1本接続するだけなので作業効率性は非常に高く、6台設置したIB大講義室でも作業は3日ほどで完了しています。
電子システム株式会社 後藤 颯馬氏
―― シュアのサポートがお役に立ったエピソードがあればお聞かせください。
馬場氏:プロジェクトが開始されて間もない頃、世界的な半導体不足で電子機器の調達が困難になることを予測する報道も出始めていましたが、当時国内ではそれを深刻に受け止める風潮は強くありませんでした。しかし、シュアだけはそのリスクに警鐘を鳴らし、発注タイミングを前倒ししたり、他のメーカで物不足が発生しても代替品で対応できるよう準備したりするなど、いち早く行動することを設計時から促してくれたおかげで、当初の予定通りMXA910とIntelliMix P300を入手することができました。シュア・ジャパンの見通しの確かさに今でも感謝しています。
ハンドマイクを使わずに自然な収音を実現しスムーズな議論や質疑応答が活発化
―― 導入後の具体的な改善例や名古屋大学のメリット、学内でのご評価などについてお聞かせください。
後藤氏:MXA910とIntelliMix P300は、Dante規格のネットワークオーディオ方式に準拠しているため、音声信号と制御信号、そして電源供給も1本のイーサネットケーブルで伝送でき、設置の手間やシステムの複雑さを削減することに大きく貢献しました。また運用面では、MXA910の導入前は、マイクシステムを事前に準備しないとハイフレックス授業が実施できませんでしたが、現在は電源ONなど最低限の操作だけになり、先生方の負担も大幅に削減されています。
また、大人数を収容できる大講義室やホールでハイフレックス型授業を行う場合も、従来のようにマイクランナーの方がマイクを持って走り回る必要はなくなりました。発言者がハンドマイクを使わずに発言しても天井に設置されたマイクロホンから自然に収音できるようになったため、話題の流れを止めずにスムーズな議論や質疑応答も可能になっています。リモートで参加する聴講者の方からは、音声が明瞭に聞き取れるようになり、自然なテンポで会話が進行するようになったというご意見をいただいたほか、大学の先生からも学生側の発言機会が増加傾向にあるというご評価をいただきました。
天井にMXA910を設置した大講義室
馬場氏:卒業生の皆様を母校にお迎えして旧交を温めていただく「名古屋大学ホームカミングデー」や、学会、シンポジウム、卒業式、キャンパス間交流イベントなどでも同時配信やアーカイブなどが行われ、会話を最大限に拾うことができるMXA910は非常に効果的です。
危機的状況の中でも調達から設置まで実施できたのは両社による総合力の賜
―― 今後のShure製品の活用予定や展開計画などをお聞かせください。
塩野谷氏:現在は名古屋大学東山キャンパスの工学部を中心にShure製品を提案してきましたが、今後は他の学部にも提案の範囲を広げていてく考えです。また、MXA910を活用する大講義室などでは、ハイフレックス型授業を行う際にTA(ティーチングアシスタント;大学の授業やその準備を行う教員をサポートする係員)の方が発言者の顔に手動でカメラを向けています。その負担も重いので、今後は発言者を自動で追尾するカメラトラックや、広い会場でどの位置で発言しても会場内で均一に声が聞こえる補助拡声「ボイスリフト」などを活用することも有効だと考えていますので、今後提案に含めることを視野に入れています。
―― 最後にプロジェクトを振り返り、シュア・ジャパンに対するご評価をお聞かせください。
馬場氏:今回は、弊社とシュア・ジャパンが、半導体不況による製品のデリバリーが滞ることを見越して様々な対策とアイデアを検討し、その結果全ての機器をほぼ必要期日通りに供給できたことが最大のポイントでした。コロナ禍及び半導体ショックという2つの危機的状況の中でも、調達から設置まで計画通りに実施できたことは両社協働による総合力の賜だと確信しています。これからも名古屋大学のベネフィット実現に最大限貢献していく考えですので、引き続きシュア・ジャパンからのサポートを期待しています。そして弊社は、その信頼を基礎にShure製品の東海地方ナンバーワンディーラーを目指してまいります。
左から、電子システム株式会社 東海支社 営業部 営業2グループ 後藤 颯馬氏、同グループマネージャー 馬場 勇太氏、同グループ 塩野谷 圭一氏
※撮影時のみマスクを外しています。