マイクの指向性: どのタイプのマイクを、どこで、どう使う?
本当にカーディオイドマイクだけが王道?確かにカーディオイド型マイクはライブで最もよく使用されます(SM57やSM58もカーディオイドタイプ)。それでも一部ではスイッチをいれるだけ(またはヘッドを変えるだけ)で指向性を選択できるモデルが重宝されることも。
マイクの指向性の収音範囲角度を理解して、マイクが何を拾い、何を遮音するかを把握できれば、ハウリングを減らし、音源を分離し、近接効果(※)をコントロールして、ライブと録音どちらでも音を創りあげることができます。さらに持ち運べるマイクの選択肢が限られるなら、指向性が変えられるマイクは言わば2本が1本になったようなもので、効率性も抜群。
ステージとスタジオで使う場合の利点を紹介する前に、基本的な指向特性パターンを復習しましょう。これには大きく3つのタイプ、無指向性、単一指向性、双指向性があります。
※ 近接効果とは? ~ マイクを音源に近づけるほど、低音域が強調される現象のこと。単一指向性で発生し、無指向性マイクでは発生しない。距離を試して、自分の声や曲のニュアンスにあったベストな位置を見つけよう。近接効果について、詳しくはこちらをご覧ください。近接効果が発生する理由
指向性をチェック
マイクの指向性は、マイクがどの方向から音を収音できるかという特性のこと。捉えたい音を最大限拾い、ハウリングや不必要な音が入るのを最低限に抑えられるマイクの最適な設置場所は、指向性によって変わります。
無指向性 (Omnidirectional)
無指向性(または「Omni」)マイクロホンは、全ての方向から同じ感度で収音。その指向性は球体で、図にするとほぼ完璧な円形。無指向性マイクは、例えばテーブルに座っている人々の声を全て拾い上げることができますが、誰かの声を優先して拾うことはできません。これはつまり、フィードバックに弱いということでもあります。
単一指向性 (Unidirectional)
単一指向性マイクは、ひとつの方向からの感度が特に高く、無指向性マイクよりフィードバックに強いので、ステージのサウンドシステムなどで使用されます。このタイプのマイクには、いくつかの種類があります:
カーディオイド (Cardioid)
単一指向性パターンの中で最も一般的なのが、カーディオイド。指向性の図の形が心臓形(カーディオイド)に似ていることに由来し、マイクの正面から来る音に対して最も感度が高く、マイクの背面から来る音に対して最も感度が低くなります。カーディオイドのピックアップ角度は131度で、2人のボーカリストの声を捉えることができるだけでなく、マイクを動かしながら歌うタイプのボーカリストの声も拾いやすく、フィードバック除去効果に優れています。
サブカーディオイド (Subcardioid)
サブカーディオイドは「ワイドカーディオイド」とも呼ばれ、指向性は無指向性マイクよりもわずかに狭く、カーディオイドよりもわずかに広くなります。最も特徴的なのは背面に対する感度で、正面に比べて3-10dBも低くなっています。サブカーディオイドパターンはワイドで平ら、ナチュラルな収音ができ、様々な楽器や声をほとんど近接効果なしに捉えることができますが、フィードバックには強くありません。
スーパーカーディオイド(Supercardioid)
スーパーカーディオイドは、カーディオイドよりもピックアップ角度が狭く、横からの音を遮断、ただしマイクの背面にある音源に対し少し感度が高くなっています。環境ノイズや近くの楽器などからの遮音性がより高いためフィードバックが発生しにくくなりますが、使用者はマイクの正面の位置を意識する必要があります。
ハイパーカーディオイド(Hypercardioid)
ハイパーカーディオイドには双指向性マイクロホンの性質(後述)がいくらか備わっており、背面に対する感度が高くなっています。ただし、側面からの音の遮断に非常に優れ、フィードバックに特に強く、スーパーカーディオイドと同じく周囲の音が被りにくい性質。ただし指向性がとても高いため、音源に対するマイク配置は正確さが求められます。
双指向性(Bidirectional)
双指向性マイク、またはフィギュア8とも呼ばれるこのタイプは、マイクの正面または背面からの音に対して同等の感度を持ち、側面からの音に対して感度が低くなりますピックアップ角度は非常に狭く、マイクの背面からノイズが入らない限り、他の音源に囲まれた中でも1つの声または楽器のみを拾い上げるのに便利。また、向かい合った2つの音源から音をピックアップするのに役立ちます。
指向性の比較
MORE REJECTION = より高いリジェクション
特定のマイク、切替え可能なパターン、一般的用途
切り替え方法(How It Changes)
Shureの指向性切り替え可能なマイク
それでは、一つずつ紹介していきましょう。
KSM44A
大型の1インチ デュアルダイアフラム、サイドアドレス型コンデンサー、パターン切り替え可能。
ライブ
- カーディオイド: ドラムオーバーヘッドまたはギターアンプに
- 双指向性: コンガまたはタムの間に
- 無指向性: IEMミックス用の環境音マイクに
レコーディング
- Mid/Sideセッティング(カーディオイドと双指向性に設定)として、きわめて優れたステレオルームマイクペアに
- ピアノのオフマイクに無指向性を
- バックグラウンドシンガー2人に1本の双指向性、または無指向性マイクを遮音ブースで使用して近接効果を排除し、ポップ音を低減
KSM141
ペンシル型の小型コンデンサマイク。回転式カラーでパターンを切り替え可能。
ライブサウンド
- ハイハット、スネア、パーカッション、ストリング楽器にカーディオイドを使用
- 無指向性をインイヤーモニターミックス用オーディエンスサウンドのマイクに
レコーディング
- オーケストラ/シンフォニーのライブレコーディングにステレオペアあるいはスポットマイク(カーディオイドをXYで、A27Mステレオマイクアダプタと併用)が最適
- ピアノあるいはルームマイクとして無指向性のペアを使用
- Recordermanテクニックを使用して、ドラムセットに2セットのカーディオイドを使用
BETA® 181
超コンパクトのサイドアドレス型、小型ダイアフラム・コンデンサー・マイク。ヘッドが交換可能。
ライブサウンド
- どんな場所でも使用しやすい!ドラムオーバーヘッドにカーディオイド、タムやコンガの間に双指向性、ギターアンプの上にスーパーカーディオイドを。
- カーディオイドのペアはピアノのリッドの下に納まることができ(A75Mユニバーサルマイクマウントを使用)、リッドを閉めることで音漏れの低減が可能
レコーディング
- 指向性違いの4種のヘッドを使用可能で、ステレオペアであらゆるステレオ方式(XY、Mid Side、Blumlein、Spaced Omni、Recorderman、ORTF)を実現
- アコースティックギターとドラムタムに最適
- ピアノマイクに最適
KSM9 & KSM9HS
デュアルダイアフラムのハンドヘルド・コンデンサー・マイク。極性パターンの選択により、さらにフィードバックを低減、収音が難しい場合でも対応。
ライブサウンド
- IEMシンガーとフロアモニタ・シンガーとの切り替えに対応
- IEMにカーディオイドを使用してわずかな環境音の取込み、スーパーカーディオイドはフロアモニタ使用時に、よりフィードバック前のゲインを提供
- ハイパーカーディオイド設定では特殊なステージやPA配置(PAがステージ裏にあるなど)でも優れた遮断効果
- サブカーディオイド設定はQ&Aマイク、TVインタビュー、TVショーの司会者用マイクに最適
- 4つの指向性パターンで提供、様々な用途に対応
レコーディング
- ハイパーカーディオイドは比類ない遮断性能と、大型ダイアフラムのコンデンサーマイクのような音質を提供、スクラッチトラックを最終ミックスに使用可能
- カーディオイドはスネアやベースアンプマイクにも優れた相性
- 録音時にマイクを手に持っていたいアーティストに最適
- ハンドリングノイズやポップ音に強く、ボーカルはスタンド固定の高価な大型ダイアフラム・コンデンサー・マイクでレコーディングしたような音質に響かせます
マイクの仕様を理解する
指向性切り替えができるマイクは、遮音効果を詳細に設定できるため、たとえばボーカリストの歌い方に合わせて選んだり、フィードバックの低減、ライブレコーディングでのブリードのコントロール、あらゆるステレオマイキングテクニックを駆使した音イメージの制作に使用することができます。音響のプロ専門家であるヒュ・ロブジョーンズ(Hugh Robjohns)氏は、こう語っています。「指向性切り替えマイクの大きな利点は、簡単に相性の実験ができること。利用してみると、カーディオイドがいつでもベストというわけではないことがわかるでしょう!」
指向性パターンに関するディスカッションを実際に見てみたい方は、こちらのShureビデオをチェックしてください。