RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO でShureのAXTが活躍
新周波数帯移行への渦中、野外の過酷な大型イベントでShureのワイヤレスシステムが選ばれました
■音質と機能性の両立。それを実現するAXT
「決め手はいつも『Shure』なんです」 そう語るのは北海道・札幌市に本拠を構えるSRカンパニー「ウイークエンド」の坂本忠希チーフエンジニア。
「SRの基本はより良い音を万遍なくすべての観客に届けること。その際、音の入口となるマイクロホンの選択は、エンジニアにとって最も大事な仕事のひとつなのです」 20年を超えるキャリアを重ねた坂本氏の言葉どおり、2014年8月に開催された「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO」ではメインのワイヤレスとしてモデル「AXT」、そして周波数管理にソフトウェア「Wireless Workbench 6」が採用されました。その理由はマイクロホン自身が持つサウンドや使い勝手の良さはもちろん、大規模イベントにおいて困難をともなう多チャンネルのワイヤレス運用を高い次元で解決する能力が評価されたため。日本は現在、新周波数帯へ移行の渦中にあり、今回のイベントでも新旧周波数の混在や、複数のステージにおける同時運用など、目に見えない電波がもたらすワイヤレス環境において様々な課題が存在します。そこでトラブル回避の最も有効な手段としてShureが選ばれたのです。
「RISING SUN ROCK FESTIVAL」は1999年にスタート。その人気の高さから連年開催されてきた日本でも有数のロックフェスティバルで、北海道小樽市の石狩湾をのぞむ特設野外ステージで行われる。広大な敷地を利用して「SUN STAGE」を筆頭に全6箇所にステージが設けられ、およそ100組のアーティストが2日間に渡り出演。著名なミュージシャンはもちろんのこと、今後が期待されるバンドも多数ラインアップし、その熱演を堪能しようと全国から音楽ファンが集結する大型イベント。また、観客ゾーンのほかにテントエリアやオートキャンプの環境が整うこと、さらに開催時期が8月半ばとあって休日と重なることから入場者数は毎年6万人に届く数字を記録する。
2014年はそこで使用されるワイヤレス総数50波を突破し、混信などに起因する電波障害がもたらすオーディオへの悪影響が予測されました。それを解決へと導いたのがワイヤレスシステムのマネージメントを担当した「Shure Japan」のサポートチーム。
Shureチームは今回の依頼を受け、全会場内の周波数プランニングを実施。新周波数帯域の機器を含むすべてのワイヤレスマイクロホンを管理しました。その大きな課題を乗り切るべく、最良のツールとして本領を発揮したのが「Wireless Workbench 6」。
このソフトウェアはワイヤレス運用の際、必要となる多くのパラメーターを包括的に管理できる無償のアプリケーションで、Windows OSおよびMac OS双方に対応。一例としては運用帯域、ガードバンドなど他の機器が用いる電波も統合してマネージメントを行い、その上で最適な周波数プランを自動で算出。その後も電波状況をリアルタイムにモニタリングできるなど、確実な運用が行える豊富な機能を搭載する。チームはこうした高い性能を活かして会場内で常時電波の分析と監視を行いながらRF環境の保全に注力。フェスティバルの終焉まで支え続けた。
「まったくのノントラブルでした。特に『AXT』および『Wireless Workbench 6』への信頼には絶大なものがあります」 そう振り返るのは前出の坂本氏。
■多チャンネルでの運用性能がさらに向上
「実は『RISING SUN ROCK FESTIVAL』に先がけで『AXT』を試用しています。その時は20波に近い多チャンネル運用でしたが、まず感心したのが干渉を自動的に検出してクリアな周波数に瞬時に切り替える干渉の検出及び回避機能です。また送信機へのリモートコントロールも充実しています。トラブルの際、マイクロホンの元へ走ることなくステージ脇から『AXT610』を用いて制御が可能とあって、大きな進化を実感しました。
『UHF-R』ではできなかったことですからね。さらに素晴らしいと感じたのが周波数ダイバーシティ」 この機能は1本のマイクロホンに内蔵される2系統の送信機を利用し、良好な周波数を監視分析。最良の側をメインに提供するというもの。もし電波品質の低下が感知された時にはオートマチックで別の周波数へと切替えを行い、常にクリーンな運用環境を構築してくれる。
「この機能を実際に確認するため、予備実験で敢えて同じ周波数を出して干渉させたところ、瞬く間に最適化が行われました。驚いたのは音の途切れなど一切起こさず、サウンドへの影響は皆無だったこと。Shureの持てるワイヤレス技術の高さとそれにかける思いを垣間見た瞬間でした」 坂本氏はさらに加えて2つのメリットを挙げる。
「専用ソフトウェア『Wireless Workbench 6』用いれば運用が格段にスムースとなります。スペクトラムスキャニングやバッテリー残量など、必要な提供情報を網羅していますし、ソフトウェア自身のつくりも視認性が良くわかりやすい。秀逸といえますね」
次に画期的といえるのが充電池の採用にあると強調。
「これまでリハーサルや本番直前に新品のバッテリーへと交換することが最も安心にワイヤレスを使う方法と信じて疑いませんでした。しかし同時に廃棄される大量の電池の残骸を見て心が痛かったこともまた事実です。それをShureが覆してくれました。充電池だとランニングコストはほぼ無視できますし、何よりエコにつながります。また管理面では受信機側やソフトウェア上で充電残量が分単位で表示され、その誤差もほとんどありません。さらに充電にもさほど時間がかからない。それらのことは運用の流れをあらかじめ予測し組立てできることを意味しています。時間という決められた枠で進行するライブパフォーマンスにおいてこうした点を活かせることは多大なメリットにつながることを今、再認識しています。日本でも多チャンネル運用は今後、増加の一途を辿るはず。運用性の向上が期待されるなか『AXT』が持つ高いRF性能は必須といえます。さまざまなことが解決へと向かうでしょうね。まさに革新です」
こうして今回のイベントでは「SUN STAGE」に4波の「AXT」が用意され、本番前日のテスト運用を含め4組のアーティストが使用。トラブルは微塵もなくフィナーレまでを走り切っている。ステージ脇で受信機の監視を担当した同社「ウイークエンド」の町田大輔氏によれば、終始抜群の安定性で、不安を感じたことはリハーサルを含め開催中一度もなかった。とコメントを残しています。
■ Shureであることの意味
そうして「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2014 in EZO」は例年どおり盛会で幕を閉じましたが、坂本氏の選択がなぜShureだったのか。その理由をこう語っています。
「エンジニアとして私のなかにはいつも『SM58』の存在があります。これにかなうマイクロホンは他にはない。声や楽器を選ばずオールマイティで、これさえあれば困ることはありません」 システムのチェックもすべて「SM58」で行うと言う氏。自身のなかではマイクロホンのリファレンスとして無くてはならないものと断言しています。
「『AXT』のRF性能は大きな発展を遂げています。ただやはりマイクロホンですから、音が良くなければ使えません。『UHF-R』が登場した時、これでワイヤードとまったく同じに扱えると喜んだことを覚えています。『AXT』はさらにそれを超えたクオリティで見事にShureサウンドを継承しています。最初に聴いたとき、いつもの感じだね。とワイヤレスであることに驚きながらも同時に安心をしました。これまでエンジニアとして様々なところへ旅をしましたが、最後に帰る場所はいつもShure。したがって弊社にとって、そして私にとって年間で最も大事な仕事のひとつである今回のイベントで『AXT』を採用すること。それは必然だったのです」
Wireless Workbench 6
Shureが提供する究極のワイヤレスシステムコントロールソフトウェア。ショーの事前計画からライブパフォーマンスのモニタリングにいたるまで、ネットワークを通じてパフォーマンスのあらゆる面を管理します。
導入製品
製品名 | 量 | 説明 | |
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AXT | ShureはAXTワイヤレスマネージメントネットワークにより、RFアプリケーションに飛躍的に新しいコントロールと信頼性の基準を導入し、障害発生ゼロを実現します。 |