オーディオ・エコシステム 第5回:テクノロジー・パートナー

Chris Lyons | 2020年6月20日 オーディオ・エコシステム 第5回:テクノロジー・パートナー

遠隔会議は、仮に映像が途切れても成立しますが、一方音声はどうでしょうか?リサーチ結果では、IT部門の意思決定者のうち81%は遠隔会議の品質向上に最も大きく影響する要素として、音声を挙げています。音が良い時には、会議の音声という部分は特段意識されることがない一方で、悪い時は決して見逃されることはないものです。疲労の原因になるだけでなく、集中力や理解力も低下していきます。そしてそれは生産性の低下につながり、最終的には企業全体収益にも影響すると考えるべきです。

この連載記事では、オーディオ・エコシステム、すなわち会議用オーディオシステムの各機器がその性能を十分に発揮しつつ、互いに最適に調和する仕組みについて解説してきました。最終回となる今回はテクノロジーパートナー、つまり異なるメーカーやブランドが相互に連携する重要性について取り上げます。

企業や大学が求めている生産性向上を実現するには、AVシステムの音声、映像、制御、およびネットワークの各部分がシームレスに連携しなければなりません。関連する製品カテゴリーそのものが複雑化する中、相互運用性はますます不可欠な要素となってきています。

WEB会議のようなオンラインで行われるコラボレーションにおいて、音声はただ聞こえるだけではダメで、はっきりと、自然に聞き取れる音でなければなりません。つまりただの音声ではなく、「プレミアムな」音声であることが求められるわけです。もっとも遠隔であろうと対面であろうと、会議においては「音」が人から人へアイデアを伝える手段であることに変わりはありません。しかし現在は、世界中にいるチームメンバーと仕事をする、オンライン学習するといったことが1日の活動時間の大半を占めることもめずらしくありません。こうした中で、オンラインという会議手段をより快適にすることが、創造性や生産性を高めるということがわかってきており、この分野への投資は贅沢どころか、むしろ必須になったと言っていいでしょう。

明瞭で自然な音声を実現するには、本来部屋の音響特性を把握し、スピーカーやマイクの振動素子の特性を理解し、さらには信頼性が担保される機器を選ぶスキルも求められます。しかしこうした知見やノウハウは、例えばWEB会議アプリのメーカーが提供できる範疇を超えています。

多人数が参加する会議の収音はさらに複雑です。部屋の条件や座席レイアウトといった要素が大きく絡んでくるからです。例えばサウンドバーのようなオールインワンの会議用機器を間に合わせに持ってきたとしても、大勢の参加者、動き回るプレゼンター、あるいは複雑な音響条件に対応しきれません。6席のテーブルに有効な会議ソリューションは、60人が座る会議室には役立たないのです。

こうなってくると、会議室に導入されるすべての機器やシステムが、1つの「チーム」のようになって連携し合うことがとても重要になります。この点で、メーカー同士が「テクノロジーパートナー」として相互運用性を保証しているものを選ぶのが賢明です。簡単な例では、WEB会議アプリとマイクロホンやカメラの組み合わせといったことです。Shureのマイクロホンの場合はMicrosoft TeamsやZoomとの動作検証をパスし、公式認定を受けています。

信頼できるテクノロジーパートナーとして保証し合う機器を選ぶことのメリットは、以下の通り4つ挙げられるでしょう。

信頼性向上

会議室や研修室は、旧来は音響設備のみでした。しかしその後音響と映像両方の設備を備えたものへと進化し、現在では音響、映像、自動カメラ、さらには部屋の照明やカーテンなどのさまざまなシステム、そしてそれらを管理するためのコントロールシステムを装備することも珍しくなくなっています。認定製品群を使用するメリットの1つはリスクの排除です。ユーザー側で連携方法を考案したり、そのためにカスタマイズしたり、相互運用可能な製品を推測したりする必要はありません。すでに関係メーカーがユーザーに代わって検証作業を済ませ、相互運用性が実証されたソリューションを開発しています。すでに補完製品プロバイダーとの関係を確立している信頼のオーディオブランドを選ぶことによって、利用者の期待に応えるAV設備の導入を、自信を持って進めることができるのです。

製品Aは製品Bと共に使用できるというだけでは不十分です。目標は相互に動作検証済みで、相互運用性が証明されている製品を選ぶことです。オーディオコンポーネントを遠隔会議プラットフォームだけでなく、カメラ・コントロール・システムやルーム・コントロール・システムともシームレスに統合する必要がある場合には、このことはとても大切です。つまり統合環境に必要なものは、単なる接続性や性能を超えて、コントロールやインジケーターの操作性、さらにはデバイス間の通信を可能にするコマンドストリングの使いやすさにまで及ぶからです。例えば会議中の音声ミュートといった単純なことでも、直感的に操作できなければユーザーが不満を抱く原因になりかねません。

時間の節約

あらかじめマッチングされたAVソリューションなら、各ハードウェアやソフトウェアの最適な設定や構成がすでに決められ、検証されています。うまく機能するものとそうでないものを確かめるために試行錯誤し、さまざまな組み合わせの比較に時間を費やす必要はありません。そうした大変な仕事はすでにメーカーが済ませているため、ユーザーは期待する結果が得られる製品と設定の組み合わせに直接たどり着けます。設定時間が短縮されることで、より素早く簡単にAVソリューションを会議空間へ展開することができます。

幅広い選択肢

テクノロジーパートナーを結ぶブランドはそれぞれ、お客様の多様なニーズを熟知しており、さまざまな部屋のタイプやサイズに合わせていくつかのパッケージ・ソリューションを用意しているのが普通です。そのため、自社の状況に近い組み合わせを比較的容易に見つけることができます。また、各種オプションや拡張性が用意されているため、施設内にさまざまなサイズ、さまざまな音響条件の部屋がある場合、あるいはWEB会議アプリやハードウェアコーデックがすでに決まっている場合も、ニーズへ十分に対処することができます。

サポート問題の低減

パートナーパッケージに問題が発生した場合、原因を解明するために頭を悩ます必要はありません。技術サポート窓口の担当者に「その組み合わせは試したことがありませんので」などと言われることはないからです。関係するすべてのサプライヤーが互いの製品を確保し、該当する製品の組み合わせを再現して状況をシミュレートすることができる場合が多いのです。そのため、動作、性能、接続、または取り付け要件の検証プロセスは大きく節約できるでしょう。

テクノロジーパートナーは、お客様に最適なAVソリューションの選定、そして導入プロセスを効率化します。信頼されるブランドが連携して、各種用途に合わせて幅広い選択肢を用意することにより、お客様が導入の迅速化、性能、信頼性、さらには日々のユーザーエクスペリエンスの向上を実現するお手伝いをすることができます。

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Shure会議用オーディオ・エコシステムは、Cisco、Microsoft Teams、Zoom、One Beyond、Logitech、Chief、Crestron、Audinate、Peerless-AVなどの幅広い主要ハードウェア / ソフトウェアツール、コントロールシステム、およびマウント用ハードウェアとの相互運用性が認定されています。詳細は【Microsoft Teams】https://www.shure.com/ja-JP/conferencing-meetings/partners/microsoft【Zoom】https://www.shure.com/ja-JP/conferencing-meetings/partners/zoomをご覧ください。

Chris Lyons

Chris Lyons

Shureで30年に渡りマーケティングと広報畑を歩んできたベテラン。複雑な音響技術をクルマや食べ物に例えてわかりやすく解説することを得意としている。歌や楽器の演奏はしないが、代わりに同僚を笑わせる。