WMASの未来 : RFワイヤレスマイクロホン技術革新の最前線
ベン・エスコベド – マーケット・デベロップメント部、マネージャー
WMASは次世代のRFワイヤレス技術として注目されており、従来の狭帯域デバイスに比べてRFスペクトル内でより多くのオーディオチャネルを確保できるという著しい利点を持っています。こちらの記事では、WMASがもたらすメリットについてご紹介しています。
皆様、WMAS(ワイヤレス・マルチチャンネル・オーディオシステム)という言葉をご存じですか?耳にしたことがあっても、その詳細についてはまだなじみが薄いのではないでしょうか。WMASは次世代のRFワイヤレス技術として注目されており、従来の狭帯域デバイスに比べてRFスペクトル内でより多くのオーディオチャネルを確保できるという著しい利点を持っています。その導入の簡便さ、電波干渉のリスク軽減、周波数コーディネーションの容易化がもたらす恩恵は計り知れません。特に、ライブサウンド、劇場、放送局、礼拝堂、ロケーションサウンドなどでワイヤレスマイクやインイヤモニタリングシステム(IEM)を頻繁に利用するプロフェッショナル達にとって、この技術の進化は大きなメリットとなるでしょう。
近年、FCC(米国連邦通信委員会)とCEPT(欧州郵便電気通信主管庁)は、周波数帯域の効率的使用を条件に、ワイヤレスマイクロホンシステムに200KHz以上の周波数帯域の使用を認める規制変更を採択しました。この規制変更により、より広い帯域で複数のオーディオチャネルチャンネルが同じ周波数を共有することが可能となり、1つの周波数で複数のワイヤレスチャネルチャンネルを運用できるようになりました。そしてこれがWMASの“MA(マルチチャンネルオーディオ)”部分の由来にもなっています。
狭帯域UHFワイヤレスマイクロフォンは、キャリアごとに200KHz以下*の周波数帯域内で動作するように規制されています。Shureは、この規制の制約下で最大限の性能を発揮するために技術的専門知識を活用し、信頼性と品質に優れた製品を提供しています。*各国の規定により異なる
システム設計、必要なオーディオチャネル数、地域ごとの規制により異なりますが、基本的には200KHz以上の帯域幅ブロックでWMASは動作します**。WMAS市場の拡大が予測される今、Shureは品質、信頼性、拡張性を備えたWMASソリューションの開発に注力を注いでいます。少しのチャンネル数しか必要としない場合でも大量のスペクトラムを使用するような機器は、他RFユーザーのワイヤレスマイクホロン運用を困難にします。このような問題を避けるために、WMAS規制では、効率的なスペクトラム使用が求められているのです。
**2024年11月現在、WMAS技術は一部の国・地域でのみ認可されており、日本国内においては今後新たな技術基準の策定が検討されています。
WMASは一般的なワイヤレス音声送信方式とは異なり、送信モードによって電波干渉耐性、オーディオチャネルチャンネル数、各機能の処理範囲や信頼性が大きく変わるため、現場の状況に合わせて送信モードを選択することで効果的に運用することが可能となります。さらに広いスペクトラムブロックが利用可能となることで従来の狭帯域ワイヤレスデバイスにはない新たな可能性と機能をもたらすことに違いないでしょう。
画期的で斬新なWMAS技術がどれほど期待される一方、現行の狭帯域ワイヤレスシステムが直ちに置き換わるわけではありません。しかしながら、スペクトル利用の効率化を実現するには、WMASの導入は必要不可欠と言えるでしょう。具体的に説明すると、WMASは隣接するオーディオチャンネルの最小チャンネル間隔を最小限に抑え、その結果、生じる相互変調歪み(IMDs)をチャンネル内の両端に戦略的に配置します。(図1を参照)これは複数のオーディオチャンネルを結合し、一つの広範なチャンネル一体化させる「ブロードバンドマルチキャリア伝送方式」を採用することで可能となるのです。
近い将来、電波規制が整備が進み完全体のWMASワイヤレスシステムが市場に登場するでしょう。今までと同じ帯域幅でより高密度のオーディオチャネルチャンネル利用が可能になり、さらに効率的なスペクトラム運用が実現します。これにより、ワイヤレスオーディオの品質と信頼性は一層向上し、多数のワイヤレス機器の管理・調整が簡素化され、セットアップの容易化や総体的なパフォーマンス向上につながります。Shureが描くワイヤレスオーディオの未来は、これまで以上に明るく、技術進化の最前線を走り続けるでしょう。