さまざまな音源に幅広く対応できる万能マイク:SM57

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スネアドラムからギターキャビネット、ボーカル、楽器などに対応するレジェンド級のSM57は、万能型のマイクロホンです。しかし、本当に何に対しても優れているのでしょうか。それは実際にこのマイクを使用した、もしくはしている方々に話を聞いたほうが早いかもしれません。

Justin Vernonは、インディーズR&Bとのコラボレーションで一躍有名になる前、ウィスコンシン州奥地の山小屋にこもってBon Iver名義のヒットアルバムを収録していました。使用したマイクは1本だけ。彼が信頼するSM57です。ネットで検索すると一目瞭然。そのあとは皆さまが見てきたとおりです。

VernonはなぜSM57を選んだのでしょうか。多くのマイクは、ステージやスタジオ、ボーカルやドラムなど、ある目的に特化したツールです。SM57はそうではありません。一台で何役もこなす、万能なマイクロホンなのです。

このマイクは本当に何でもできるので、ギターでの使用にも理想的ですし、ドラムでもプロの音質を再現します。何かに取りつかれたような、何層にも重なるBon Iverのボーカルで分かるように、ボーカルを上品に再現します。‥‥それから、ハンマーが手元にない時に…そんな時も使えてしまいます。

地位

SM57が現在もどれだけ感動を与え続けているかを伝える前に、その過去をたどってみましょう。このマイクには、"クール"な歴史がありますから。

「すべては、1959年のUnidyne IIIから始まりました」。そう説明するのは、Shureの歴史家のMichael Pettersenです。「それは、マイクの中にあるカートリッジのことで、元々はモデル545と呼ばれるマイクに使われていました」。

「James BrownとMick Jaggerが、ステージ上で初めて使ったうちの数人にあたり、1964年のT.A.M.I. Showで使われています。YouTubeにその時の素晴らしい映像が残っています」。

実力を示したそのUnidyneの要素が、1965年に初めてリリースされた真新しいSM57に採用されたのです。オーディオエンジニアたちは、まもなく、そのマイクがほぼあらゆるサウンドの収音に使えることに気づきます。しかも、非常に優れた音質で。

「スネアドラムに理想的で、そのために使われているのをたくさん見てきました」、と Pettersenは言います。「ギターアンプでも素晴らしく、オーバーロードすることがないので、特に音量の大きい場面に優れています。それからパーカッション、トムトム。とにかく、何にでも対応するのです」。

それでは、SM57と、それよりも若干有名な兄弟マイクのSM58の違いは何でしょう。

「この2種類のマイクは、基本的には同じですが、SM58は端にバーグリルがあるのに対して、SM57にはありません」と、Pettersenは指摘します。「SM57は音源をマイクダイアフラムにより近づけることができるため、少し音が違って聞こえる場合があります」。

多くのファン

非の打ちどころがない歴史があり、驚くほどフレキシブルに使えるため、誰もが一度はSM57を使用した経験があります。

Bon IverのJustin Vernon以外にも、同じインディーズ作曲家のSufjan Stevensも2本のSM57を使って、自身がブレイクしたアルバムを録音しました。並外れた才能を持つプロデューサーのRick Rubinは、ファンクパンクロックバンドRed Hot Chili Peppersのレコーディングを行った際に、キックとボーカルの両方に使用しました。また、生きる伝説と呼ばれているNiles Rodgersは、PharrellとDaft Punkによる世界的ヒット曲「Get Lucky」で、お察しのとおり、SM57を使用してすべてのギター音を録音しています。

「SM57は、現在も続いている音楽の歴史の"クール"な部分を担っているのです」、とPettersenは語ります。「たとえば、最近Questloveのドキュメンタリー映画『Summer of Soul』を観ていたのですが、ミュージシャンは全員SM57を使って歌っていました。すごくクールでした」。

「それからJimmy Fallonの番組である『The Tonight Show』を見ると、Questloveが使っているキットにSM57がありました。つまり、これは果てしのない物語であり、SM57を使っているすべての人が、その一翼を担っているのです」。

そして当然、大統領もいます。

「アメリカ合衆国の大統領に初めて使用されたのは、1965年、 Lyndon Johnson氏の時でした」と、Pettersenは説明します。「それまで、大統領たちは様々な種類のマイクを使っていました。しかし、ホワイトハウスの誰かが、「大統領の声がどう聞こえるか制御できるようにすべき」ということに気づきました。 それ以来、歴代の大統領全員が使用しています。その間、故障したSM57は1本もありませんでした」

SM57の魔法

この名高い信頼性の理由の1つに、SM57がシンプルであるという点が挙げられます。

Shureの有線マイクロホン担当責任者のJohn Bornは、次のように述べています。「失敗する要素が搭載されていないのです。部品は40個ほどで、いずれもそれほど複雑ではありません。それに、ダイナミック型マイクなので、電源なしで動作します」。

しかし、シンプルでありながら、決して平凡ではありません。

「ただ機能するダイナミック型マイクを作るのは簡単ですが、優れたものを作るのは非常に困難です」と、Bornは断言します。「どのような音を収音するかという周波数特性のバランスを取ります。その一方で、どの方向から音を収音するかという指向性のバランスも取ります」。

それでは、この由緒あるマイクの秘密の決め手は何なのでしょうか。

「他の要素を妥協することなく、うまくそれを両立することはほぼ不可能です」と、Bornは言います。「ですが、SM57はどうにかしてそれを成し遂げているのです」。

それから、このマイクの耐久性について触れないといけないですね。

「SM57を車でひいたり、ビルの上から落としたり、水没させたりしましたが、それでも機能します」と、Pettersenは付け加えます。「このマイクは耐久性が非常に高く作られているのです。YouTubeの動画で、これをハンマーとして使っているのも見たことがあります。その後でも、このマイクは無事だったのです」。

それだけでなく、極度の音圧でも耐えられるほど、音質的な耐久性も極めて高く作られています。

「おそらく、ロケットの打ち上げの横に置いておくくらいしないと壊れないでしょう」と、Pettersenは指摘します。「最大限の大声で歌うか、できる限りの大音量でアンプを鳴らしても、SM57は対処できます」。

その名高い耐久性と、まぎれもない音色とを組み合わせれば、地元のDIYパンクショーでドラムキットをマイキングするのと同じくらいの確率で、近頃SM57がAppleのプロモーションビデオに登場するのを目にしているかもしれないことを、容易に理解できるでしょう。

「新しい世代ごとに、SM57は再評価されています」、とPettersenは強く語ります。「何でも収音できるので、初心者にも最適なマイクですし、極めて長い間使えます。それだけでなく、プロにも愛用されているのです。プロデューサーに、『あなたにとって、なくてはならないマイクはどれですか?』と尋ねると、彼らはほとんど決まってSM57と答えます」。

万能なSM57について詳しくはこちら。