モバイル・ジャーナリズムがTVニュースに取って代わる時代

モバイル・ジャーナリズムがTVニュースに取って代わる時代

シェアする Facebook Twitter LinkedIn

モバイル・ジャーナリズムがTVニュースに取って代わる時代

Facebook Twitter LinkedIn

ハンブルクに拠点を置くドイツの公共放送局NDRの編集者兼プロデューサーを務めるビョルン・スタシェン氏は、21世紀における取材活動の革新的アプローチについて研究するNextNewsLab(ネクスト・ニュース・ラボ)を率いる人物でもあります。 この革新的アプローチとは、最近では「モジョ(Mojo)」と呼ばれるモバイルジャーナリズムのことです。

「ニュースを集める」という作業は、レポーターが現場に駆け付けて取材するという意味で、これまでも常に「モバイル(携帯)」と言えましたが、そのレポーター1人でできることに関してはスマートフォンとブロードバンドワイヤレスの発展が大々的な変革を起こしています。これらの新たなテクノロジーのおかげで、速報を伝えるための大人数のTV取材班や衛星通信車両の必要性はなくなりました。しかし、ジャーナリストがプロとして仕事をこなすためには、現在も適切なツールとスキルが求められています。

ハンブルクに拠点を置くドイツの公共放送局NDRの編集者兼プロデューサーを務めるビョルン・スタシェン氏は、21世紀における取材活動の革新的アプローチについて研究するNextNewsLab(ネクスト・ニュース・ラボ)を率いる人物でもあります。 この革新的アプローチとは、最近では「モジョ(Mojo)」と呼ばれるモバイルジャーナリズムのことです。

ShureはNDR本社を訪れ、従来の放送担当者たちがどの程度モバイルジャーナリズムを活用し始めているのか、スタシェン氏に話を聞きました。

「私たちは主に、スマートフォンが従来のTVプロダクションに有効かどうか探求しています。スマートフォンこそがベスト、というストーリーは多々あります。」とスタシェン氏は述べています。

インタビュー全編は下記からお聴きください。

概要翻訳

NextNewsLabでのお仕事について教えてもらえますか?
私たちは主に、スマートフォンがTVニュースの製作に有効かどうか探求しています。

それは、従来のテレビ放送の手法を入れ替えるということですか?
そうではありません。スマートフォンの可能性についての調査はまだ初期段階ですが、不利な点も確かにあります。例えば、最新機種のiPhone以外のスマートフォンの録画は通常ワイド角ですし、光の具合によっては対応が難しいのが実情です。

その意味では、スマートフォンは新しいの手法として取って代わる存在というよりも、加えていくべき手法といえるでしょう。将来的には、まず題目を考え、どのように話を紹介したいのかを決定し、その話の内容に合わせてスマートフォンかフル・プロダクションチームかを選んで収録を始め、それからオンラインで公開するのか、TV番組で紹介するのかを決める、というプロセスになると思います。

どのような話題がモバイルジャーナリズムに適しているのでしょうか。
長時間現場にいてその場でプロダクションを行う必要がある場合、たとえば何かが開発途中でその周りで活動する人々の毎日の生活を追う、というケースが当てはまります。

スマートフォンの大きな利点は、自分で編集し、ナレーションを入れ、現場に居ながらにしてストーリーをアップロードできることにあります。カメラ・クルーとの作業だと、衛星通信車両とデスクトップのコンピュータがなければ編集は出来ません。

それから、速報は最初の1時間がスマートフォンでの取材が効果的だと思います。例えば、ハンブルク空港が重大なエラーにより閉鎖されてしまった最近の出来事のような場合、すぐに現場に急行し、画像とビデオを録画して、完全なプロダクションのストーリーをオンラインで1時間以内に公開することができます。これは従来のプロダクション機器では到底実現できません。

従来の放送体系に関わる人たちは、モバイルジャーナリズムについてどう考えているのでしょうか?
我々は話し合いもたくさんしており、正直な意見のぶつかり合いも多々あります。「本当にいい手法なのか?この話にこの手法で本当にやりたかったのか?」など。

NextNewsLabの素晴らしいところは、従来のプロダクション部署、つまりカメラや編集部の人たちがメンバーにいることです。ですから、従来の手法に長けているジャーナリストのエキスパート達が、NextNewsLabで行っていることを彼ら自身の部署で共有してくれるというわけです。NDRでは様々なエリアで良質なプロセスを実行していて、これが最終的には、モバイルジャーナリズムが何に向いているのかを理解するため、実質的な共同作業の試みにつながっていると思います。

人々がスマートフォンを使いこなせるかどうかは世代間の変化なのでしょうか?
そうは思いません。私は44歳で、NDRの中では若くない方です。でもこの私がモバイルジャーナリズムの探求を率いているのですから。

どちらかというと、変化や新たな機会に対して人々がオープンかどうか気持ちの違いではないでしょうか。これは年齢に縛られることとは思いません。私の周りには好奇心旺盛な65歳の人もいます。そのような好奇心がある人とは仕事が進みやすいものです。

NDRのモバイルジャーナリズム探求に対する周りの評価は?
皆さんそれぞれです。ちょっと煩わしく感じている人もいるでしょう。でもなぜ煩わしいのかを明確に理解している人はいないようです。ですから、いくつかの明らかな違いというものはありますが、質の問題ではないと思います。色も違うし、コントラストも違いますから、確かに何かが違うのはわかる。でも私としては、質の見合わない録画を放映したことはありませんから、視聴者のほとんどは気づいていないと思います。

モバイルジャーナリズムはこれからどこに向かっていると思われますか?
TVニュースの製作には便利な追加手法ですし、同じニュースを異なる媒体、例えばソーシャルメディアから始めて次にTVショーに共有するという場合などには素晴らしい手法です。

それから様々な方法でのストーリーテリングに役立つのも事実です。

NDRやBBCといった大型放送局がスマートフォンだけに頼るということは今後もないと思いますが、速報にスマートフォンを使い、その後カメラ・クルーが入って取材を続けるという手法はこれからも増えていくでしょう。こうしてスマートフォンの存在は、放送ニュースジャーナリズムにおいて定位置を維持していくと思います。